「マネーボール」を観る。

タモさん 「『カーネーション』は2話のあいだに子供が二人も生まれてたね」
俺 「そうですね!」
タモさん 「かわいそうに糸子の恥じらいの初夜シーンとかを期待してた人もいたらしいよ」
俺 「そうですね!」
タモさん 「なんでも同意すればいいってもんじゃないよ」


 久々の休日。午前中ようやく冬タイヤに取り換え、午後は両親と大豆の収穫。夕方二人を仙台に送り出した後、ここから31キロ離れたシネマ・リオーネ古川まで車をぶっ飛ばして20時の回の「マネーボール」を見に行く。

 上映前の予告編は「麒麟の翼」、「聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実」、「セカンド・バージン」の邦画のみ。「マネーボール」を観に来る観客にこれらの予告編を見せたら見に来てくれるかなぁ。ここの公開予定表を観る限り、俺が観たかった予告編は「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」「ワイルド7」「マイウェイ 12,000キロの真実」あたりだけどな。レイトショー価格の時間帯をわざわざ狙ってくるお客に他のシネコンでも観られるラインナップをこの劇場で確実に観てもらおうと思ったら、客の好きそうなラインナップの傾向のようなものをピンポイントで当てていくくらいの事しかできないと思うけどな。Amazonのおすすめの方がよっぽどいらないくらい正確に攻めて来るよ。
 色々なところで書かれていることだけど「マネーボール」で描かれていることは、様々な業界にも当てはまる。上の予告編だけ取ってみても、東野圭吾原作だから、戦後70年目だから(なのか?)、NHKのドラマで話題になったから、ぐらいの根拠でしか製作されてないような気がするが、企画会議でこれらの理由に一介の会社員が反論しこれに代わる当たる企画は何かと問われることを考えれば、ビリー・ビーンの証明しようとしたことの難しさとプレッシャーは想像がつく。
 「この選手が成功する」「この企画が当たる」なんてことを証明することなんか誰にもできない。できることは与えられた予算でどれだけそれに近づくことができるかという手段を模索することだ。そういう意味では前回色々文句も言ったけどドラマの「火車」はファンの理想を言えば切りがない原作のどの部分をどの客層に向けて作っていったかを考えれば相当頑張ったし、結果も出てた。でも、それをなし得たのは製作者たちが原作の「火車」をジョナ・ヒルが野球選手たちを見るような冷静な眼で分析していたからだと思うのだ。
 ブラッド・ピットはいつになくわかりやすいカッコ良さでビリー・ビーンを演じてる。そのカッコ良さは下手すりゃジョナ・ヒルとBLモノが一本作れそうなレベル(なんでそっち?)。この作品を観てジョナ・ヒル出世作「スーパーバッド 童貞ウォーズ」を借りようと思ったんだけど、家の近所(と言っても10キロぐらいはある)のTutayaにないんだよね。取り寄せようにもタイトルがなぁ。あと、単年契約でブーたれてる監督にフィリップ・シーモア・ホフマン。これが物凄い貫禄があるプロ野球の監督の見た目になってて驚いた。

 ビリー・ビーンが娘とギターショップへ行くシーンにグッと来るものがあった。ホントね、娘がいてこんな歌歌ってくれればいいですよ。現実には「いきものがかり」とかなんだろうけど。




 冒頭の血染めの折り鶴はアレですか。そこでベタに泣かせると見せかけて、実はトリックとかなんですよね。青年が轢かれるシーンはアレですよね。轢かれたんじゃなくて、轢かれるの待ってたんですよね。最高傑作ですもんね。ナニかあるよね。


 この映画はアレですよね。偉そうな人が偉そうな人たちがいっぱいいる部屋の中でエラそうな台詞をいうだけの映画じゃないですよね。それじゃいつものアレと一緒ですもんね。「激動の昭和」四部作、「人間の条件」六部作、「戦争と人間」三部作を観た僕にも初めて明かされる太平洋戦争の真実があるわけですよね。そうだよね。


 この映画はアレですよね。テレビで見せられない物が当然映ってるわけですよね。じゃないと1,800円払って観る人がかわいそうですもんね。それで「ミッドナイト・エクスプレス」とか「ブロークダウン・パレス」ばりな展開を見せるわけですよね。そうだよね。